2025年のお正月の食卓は.-お天気百話⑪
お正月の魚は、「東の鮭(サケ)、西の鰤(ブリ)」といわれ、日本を東西に2分していました。大泉育ちの私は、小さい頃に、年末の魚屋の店頭で何本もの新巻サケがぶら下がっていたのを思い出します。また、サケは出世魚と考えられており、おせち料理にはサケの焼き物が入っていました。そして、おせち料理に飽きたころにはさけ茶漬けを賞味していました。
しかし、現在、東北・北海道でサケの漁獲量は、年々、減少して、最盛期(1996年)の20%以下になっています(水産庁、2021、水産資源研究所、2024)。店頭からは新巻サケが消え、「いくら」も手の届かないところに移っています。これに対して、西日本で多かったブリの漁獲量は、この10年の間に岩手県や北海道で多くなり、その上位を占めるようになりました(水産庁、2022)。私の住んでいるつくばでも、ブリシャブやブリの照り焼きがお正月料理として重宝されるようになっています。
その、原因の一つに日本近海の海面水温の変化が考えられます。気象庁によると、日本の日本近海の年平均海面水温は、2023年までのおよそ100年間に1.28℃高くなりました。とくに、サケの漁獲地域である山形県から秋田県沖の日本海中部地域では、1.94℃、釧路沖でも1.66℃高くなっているのです(図1)。このため、サケやブリの生息域が変わり、漁獲量も変化したのではないでしょうか。
図1.日本近海の海域平均海面水温(年平均)の上昇率(℃/100年)の分布(気象庁).
このように、大気ばかりでなく、海洋の温暖化も進んでおり、私たちのお正月の食卓も大きな影響を受けているのです。
ペンネーム:つくばのトリさん
井草高校27期D組の卒業生です。
地図と時刻表をもって旅行することが好きで、高校時代は山岳部に所属していました。
その後、大学で気象・気候学の面白さを知り、その延長線で気象・気候に関係する職業に携わったので、茨城県のつくばに住んでいます。
これからも、どうかよろしくお願いします。
詳しくは、私のブログ「圃場管理のための気象のお話」の「著者プロファイル」をご覧ください。