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IGUSA High School Alumni Association
2024-05-01

お天気百話⑥

新緑から梅雨の季節に吹く風

 石神井松の風文化公園の西端にあるアメダス練馬で観測された風のデータを見ると、新緑から梅雨の季節の時期に、「シベリア大陸からの冷たい北風」から「太平洋からの暖かい南風」に、風の「主役」が変わることがわかります。
 ところが、この時期に、ときおり、この「主役」を脅かす、やっかいな風が吹きます。
 天気情報などで「北東からの冷たく湿った風」あるいは短く「北東からの風」として紹介されるのが、この風です。アメダス練馬で東風として観測されるこの風は、オホーツク海や北海道東方を源とし、親潮(寒流)の上を通過するので、本州の東岸に冷たい湿り気の多い空気をもたらします。関東平野では、この風の吹く日は「曇りや雨が降る、肌寒い日」となることから、洗濯物を外に干さないことが肝要です。
 東北地方では、この風は「やませ」と呼ばれています。また、ときより冷害をもたらすことから、「飢餓風」として恐れられています。今から30年前の1993年、この「やませ」が、新緑の季節から梅雨の季節を過ぎ、じつに夏の終わりまで「主役」であったことから、とんでもなくひどい冷害に見舞われ、「平成の米騒動」が起きました。
 江古田の武蔵大学東門横にあった(旧)アメダス練馬の観測値を見ると、5月1日から9月30日まで、気温の低い日が多く、とくに、1993年7月の平均気温は、現在より4.2℃も低くなりました(図を参照)。

(注)アメダス練馬は、2012年に武蔵大学東門横から、現在の石神井松の風文化公園西端に移動しました(武蔵学園百年史より)。


図.1993年5月1日から8月31日まで、(旧)アメダス練馬で観測された日最高気温(赤線)、日平均気温(緑線)そして日最低気温(青線)の時間変化.薄青で塗られた部分は日最高気温、日平均気温そして日最低気温が現在よりも低い期間、橙色で塗られた部分は現在よりも高い期間を示す。これから、5月1日から8月31日までのほとんどの期間、日最高気温、日平均気温そして日最低気温が現在よりも低かった。とくに、7月中旬と8月上旬に、日最高気温が現在の日最低気温よりも低い日が何日もあったことがわかる。

ペンネーム:つくばのトリさん
井草高校27期D組の卒業生です。
地図と時刻表をもって旅行することが好きで、高校時代は山岳部に所属していました。
その後、大学で気象・気候学の面白さを知り、その延長線で気象・気候に関係する職業に携わったので、茨城県のつくばに住んでいます。
これからも、どうかよろしくお願いします。
詳しくは、私のブログ「圃場管理のための気象のお話」の「著者プロファイル」をご覧ください。

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