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IGUSA High School Alumni Association
2024-06-01

雨降りのお話-6月の雨-お天気百話⑦

 6月は雨の季節です。これは、今まで居座っていた春の大気と太平洋から押し寄せてくる夏の大気との境界が、日本列島に位置するからです。そして、この境界では、これから話題となる梅雨前線が発生します。この梅雨前線は5月下旬ころから7月中旬にかけて日本列島を縦断するのです。
 練馬区立石神井松の風文化公園の西端にあるアメダス練馬の降水量(雨量)の1年間の変化(図1)を見ると、石神井公園周辺の地域(井草高校も含まれます)では1年間に約1,500mmの降水量があり、この約13%(8分の1)が6月に降ることがわかります。ちなみに、降水量が1番多い月は9月、ついで10月です。この二月で降水量が多いのは、夏の大気と秋の大気の境界が日本列島にあり、この境界に秋雨前線が発生するからです。また、この時期に日本を通過あるいは接近する台風も、多くの降水量をもたらします。さらに3月と4月も、前後の月と比較して降水量が多い月ですが、これは日本列島が冬の大気と春の大気の境界となるからです。このように季節を代表する大気の境目が日本列島にあるときには、多くの雨が降ります。

図1.アメダス練馬における降水量の年変化.
(2013年から2023年までの11年間における月の平均値を示したもの.気象庁HPより)

 さて、この降水量は地域によって大きな違いがあることは、地理の授業でお聞きになったかと思います。しかし、関東地方の中でも大きな違いがあるのはご存じですか。つくばに住んでいる私は、「東京では雨が降っているから、つくば駅に迎えに来て」という連絡を受けることがよくあります。つくばでは雨が降っていないのにもかかわらずです。そこで、東京周辺の降水量分布(場所による降水量の違い)を調べて見ました。下の地図は、東京都心を中心とした関東地方中央部の6月の降水量分布を示したものです。赤は降水量の多いところ、紫は降水量の少ないところ、そして紫から赤に変化するに従って、降水量が多くなることを示しています。
 この図をみると、神奈川県丹沢や、東京都青梅、埼玉県飯能の山地、そして千葉県房総半島中央部の山地では降水量が多く、220mm以上になることがわかります。これに対して、東京都東部から千葉県北部、埼玉県東部そして茨城県(つくばも含まれています)では降水量が少なく、180mm以下となっています。このおもな原因は地形にあります。降水量の多い地域は山地であることがわかります。
 また同じ東京の平地でも、山手と呼ばれる比較的標高の高い地域は、標高の低い下町と呼ばれる地域と比較して、30~40%ほど降水量が多くなっています。東大和市や多摩市、西東京市や武蔵野市はその周辺と比較して降水量が多い、そして、羽田にある東京国際空港や東京ディズニーランドの降水量は少ない。井草は降水量の比較的多い場所ですね。
 私たちの地元は、6月の雨の降り方にもこのような特徴をもっているのです。

図2.東京都心を中心とする関東地方中央部における6月の降水量の分布.
(2013年から2023年までの11年間における6月の平均値を示したもの.農研機構メッシュ農業気象データより)

ペンネーム:つくばのトリさん
井草高校27期D組の卒業生です。
地図と時刻表をもって旅行することが好きで、高校時代は山岳部に所属していました。
その後、大学で気象・気候学の面白さを知り、その延長線で気象・気候に関係する職業に携わったので、茨城県のつくばに住んでいます。
これからも、どうかよろしくお願いします。
詳しくは、私のブログ「圃場管理のための気象のお話」の「著者プロファイル」をご覧ください。

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