toggle
IGUSA High School Alumni Association
2023-12-01

お天気百話④

前回に引き続いて、私が研究のために訪れたグリーンランドの気象についてお話をします。みなさま、お楽しみください。

その4. グリーンランド~後編

〇グリーンランド氷床上の気象観測地点
 私が滞在した気象観測地点は、イルリサットから北東に約80km、北緯69°34′37″、西経49°16′09″、標高1,145mのグリーンランド氷床上にあります。この地点までは、イルリサットから小型のヘリコプターで約30分のフライトでした。
 ここでは、赤いテントを中心として、高さ30mの鉄塔や様々な観測機器、そして生活のエネルギー源である太陽光パネルと風力発電機などが半径20m以内に配置されていました。テントは、高さ2m、幅2m、奥行き2mのかまぼこ形3張で、氷床表面上の木製プラットフォームの上に建てられており、寝室と食堂、そして作業場として使われていました。水は周辺の氷を融かして調達し、食事はメンバー4人が交代制で作ります。

(上空からみたグリーンランド氷床上の気象観測地点と住居となるかまぼこ形の赤いテント。1991年7月1日 著者撮影)

 この氷床上の観測地点では、気温や降水量、湿度、太陽からの放射量など、さまざまな気象要素が測定されました。また、高さ30mの鉄塔を用いて、大気中の熱や水蒸気、二酸化炭素の移動に関する観測も行われ、さらに、観測地点周囲100m四方の積雪層や、観測地点上空から25,000mから30,000mまでの高高度での気温や風向・風速、湿度を測定するラジオ・ゾンデ観測も行われていました。私は、積雪層観測を1日1回、ゾンデ観測を1日2回担当しました。積雪層観測では、指定された場所に距離スキーで移動して、氷床表面の高さを物差しで測定し、積雪層の断面を目視と測定機器を使って観察します。また、ゾンデ観測では、気象観測測器が搭載された気球を飛ばし、高高度の気温や湿度、風向・風速を測定します。

(積雪層観測とゾンデ観測を行っている著者。1991年7月14日 撮影)

 わたしが気象観測地点にいた期間の平均気温は0.5℃で、最高気温は3.0℃、最低気温は-4.4℃、風は平均で6.9m/sと強い日々が続きました(ETH GREENLAND EXPEDETION 1991)。また、この時期は、太陽は一日中頭上を周回しており、地平線に沈むことはありません。ただし、太陽高度は変化をしており、これによる太陽光線(日射量)のわずかな強さの変化で、足下の氷が融けたりと凍ったりしました。融けた水は川となり、氷床表面を流れ、湖を作ります。この「雪と氷の世界の川と湖」という美しい光景は、「氷の大地」ならではの魅力の一つとなっています。

(グリーンランド氷床上で夏に見られる川と湖。1991年7月1日、5日 著者撮影)

ペンネーム:つくばのトリさん
井草高校27期D組の卒業生です。
地図と時刻表をもって旅行することが好きで、高校時代は山岳部に所属していました。
その後、大学で気象・気候学の面白さを知り、その延長線で気象・気候に関係する職業に携わったので、茨城県のつくばに住んでいます。
これからも、どうかよろしくお願いします。
詳しくは、私のブログ「圃場管理のための気象のお話」の「著者プロファイル」をご覧ください。

タグ:
関連記事