梅雨の短い夏、そして暑い夏ーお天気百話⑭
梅雨の短い夏、そして暑い夏ーお天気百話⑭
気象庁は、9月1日に、「2025年夏の梅雨入り・梅雨明けの日」を発表しました。関東甲信地方ではそれぞれ、5月22日頃、6月28日頃とされています。これは、平年と比べると梅雨入りは17日早く、梅雨明けは22日も早くなったことになります。前回のお天気百話⑬で「梅雨は夏の暑さを和らげる」というお話をした7月15日頃は、まだ気象庁からの梅雨明けの発表はなく、私たちは「梅雨」の中で生活していると思っていました。しかし、実際には20日近くも先立って梅雨が明けたことになったのです。
また、この夏は降水量が少なく、練馬(石神井松の風文化公園西端)では6月1日から8月31日までの降水量が289mmにとどまりましたが、これは、平年(531.6mm)の54%にすぎません。さらに、気温も高く、晴天の日が多かったことから、四国から近畿地方の太平洋側、東海、関東地方では「干ばつ」といっても差し支えない天候となりました(図1:気象庁 日本の気温・降水量・日照時間の分布図(季節))。
図1.2025年6月から8月まで(夏期)の平均気温の平年差、降水量と日照時間の平年比の分布(気象庁)
この天候は、農作物に大きな影響を与えました。毎日の買い物のためにスーパーの野菜売り場をのぞいてみて、葉もの野菜の高値に驚いた方は多かったのではないでしょうか。レタスは暑さに弱いために、この夏の期間に生育したものは生育不良や品質が低下に見舞われました。その結果、9月3日の時点で全国の市場平均で1kg当たり400円にまで高騰しました。6月上旬の価格は140円くらいでしたから3倍近くまで高くなったことになります(アグリネ レタスの価格 全国の市場)。
また、今、話題になっているお米はどうでしょうか。農林水産省は令和7年産水稲の8月15日現在における10a当たり収量の前年比見込み(対前年56万玄米トン増)に向け、おおむね順調に推移していると発表しています。しかし、この夏の天候の影響と昨年からの続く「コメ騒動」を考えると、安心してばかりもいられません。
2025年の夏の平均気温は、2023年、2024年に引き続き、3年連続で高い記録となりました(気象庁)(図2)。国際的な研究機関WAC(極端気象アトリビューションセンター)は、「この高温は地球温暖化がなければ起こらなかった」と分析しています。また、気象庁の有識者検討会の中村尚会長は「我々が経験していないことが起こりつつあり、対応をしっかり考えないといけない」と警鐘を鳴らしています(テレ朝NEWS)。
このような天候に直面して、私たちは、この夏の天候とその影響をしっかりと記録し、これをもとに将来の夏の暑さ対策をしっかりと考える必要があります。そして、この積み重ねこそが、これからの温暖化対策に繋がることになるのではないでしょうか。
図2.1898年の統計開始以降の夏(6~8月)の平均気温に関して,基準値(1991〜2020年の30年平均値)からの偏差の経年変化.日本の夏の平均気温は,数年単位の変動を繰り返しながらも上昇しており,長期的には100年あたり1.38℃の割合で上昇していることがわかる.なかでも2023、2024、2025年は上昇が大きい(気象庁 日本の季節平均気温).
ペンネーム:つくばのトリさん
井草高校27期D組の卒業生です。
地図と時刻表をもって旅行することが好きで、高校時代は山岳部に所属していました。
その後、大学で気象・気候学の面白さを知り、その延長線で気象・気候に関係する職業に携わったので、茨城県のつくばに住んでいます。
これからも、どうかよろしくお願いします。
詳しくは、私のブログ「圃場管理のための気象のお話」の「著者プロファイル」をご覧ください。